まことか、うそか、あること、ないこと、てきとうに。話半分でご覧ください。 
2015年02月17日 (火) | 編集 |
昔、よく一人旅をした。

行き先がよくわからない電車にふら~っと飛び乗って、
適当なところで降りてブラブラ歩く。
心にピピッときたところで歩みを止め、
背負ったリュックからスケッチブックをとりだし
その一瞬を描く。

なんとなくその地が気に入ったら、
チラシと案内板しかない無人の駅前の観光案内所でその日の宿を選び
10円玉をピンクの公衆電話に投入しながら
「今晩1人、空いてますか?」と尋ねる。

宿につくと割ぽう着を着たままの女将が部屋まで案内してくれる。
お茶を入れながら、私のスケッチブックをみつけ
「お兄さん、絵、描くの?」
「ええ、人様にお見せできるようなもんじゃないですけどね。」
「ここはいいところたくさんあるんよ。名所はないけんどね。」
「そういえば来る途中にあった菜の花畑、きれいでしたね。」
他愛の無い会話に心が和む。

夜は決して豪勢ではないが、素朴な土地のものが並ぶ。
甘すぎもせず塩っ辛くもない出汁のきいた質素な味わいだが
しっかり手をかけてきめ細やかな配慮がなされている。
何だかとても温かい。

翌朝、出発の際はわざわざ見送りに出てくださり
「何もないところだけど、また来てくださいね。」
満面の笑みで送り出される、気恥ずかしさと心地よさ。
「ええ、必ず。」
照れ笑いで答え、宿をあとにする。

わざと遠回りしての駅への道すがら、
畑へ向かうお婆ちゃんとすれ違う。
「おはようさん。」
「あ、おはようございます。」
「どっからきたんだい?」
「東京です。」
「これから帰るんかい?」
「ええ。」
「気ぃつけてな。」
「ありがとうございます。」
そんな何気ない挨拶が自然にかわされる。

東京へ向かう列車の中で余韻に浸る。
「ああ、良い旅だったなぁ。」



日曜日に、久しぶりに電車に乗った。

ヨロヨロと電車に乗ってきて私の横に座ったお婆ちゃんが
座るや否や手提げからタブレット型端末を取り出し
軽快で見事な指さばきを駆使して画面をスクロールし始めた。

その姿を横目で見ながら

「もう、あの頃したような旅はできないのだろうな。」

なぜだかわからないが
でも、そう確信した。




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成熟と喪失

母が作ってくれたカレーの味や
初めて食べたチョコの味が感覚的に心に残っているのに、
舌先には決してよみがえってくれない。

心の襞が繊細になるにつれ、
つまり成熟するにつれ、
大切なものが消えていきます。

そういうとき男は、
ため息をつくしかありません。

たかのつめこと、ケンでした。
マツケン系ではなく高倉もしくは渡辺系のケンです。(念のため)
2015/02/18(水) 07:59:08 | URL | たかのつめ #m5nORXto[ 編集]
ケンさん、こんにちは。

ケンさんですか?

…はぁ(と、ため息)

映画「男はつらいよ」で何作目かは忘れましたが、
「歌手のはるみ」役の都はるみが

明日何するかは
明日になんなきゃ決まらないなんて、
いいだろうなぁ。

としみじみ語ったシーンがあります。

乗る列車を調べるのも、
その列車の座席をとるのも、
きれいで印象的な景色をとるのも、
宿をとるのも、晩ごはん食べる店を選ぶのも、
なんでも携帯で事前に調べられできてしまう世の中は
確かに便利で快適かもしれませんが、
それ以上にとても大切な何かが
欠落しているような気がしてなりません。
ゆとりというか幅というか無駄みたいなものが…。
その一見無駄とも思える経験をたくさんしてきた奴ほど
人間として豊かで器が大きい、そんな気がします。

ケンさんは、そうは思いませんか?


2015/02/18(水) 15:09:31 | URL | 三流亭まん丸 #-[ 編集]
今晩は。

僕も一人旅が好きで、大学生の頃
から、ん?十年経った今でも、一人旅、鈍行派です。
2015/02/19(木) 20:11:44 | URL | jizosmile #-[ 編集]
jizosmileさん、おはようございます。

私も鈍行派です。
深夜発の東海道線大垣行きや、
ムーンライト越後(当時はムーンライト村上)
といった夜行をよく使いました。
スケジュールを決めて行く家族旅行が多くなりましたが、
やはり旅は一人で
「足の向くまま気の向くまま」
がいいですね。

また一人旅したくなりましたねぇ。
2015/02/20(金) 05:23:47 | URL | 三流亭まん丸 #-[ 編集]
以前私も自分のBlogで書いたような気がしますが、昔ながらのアナログな時代には戻れないのかもしれませんね。これ俺が作ったテープなんていって車で聞こうにもテープがない。それこそCDもないなんてこともありますからね。

自分の声を吹き込むなんていう「世界の中心で愛を叫ぶ」みたいな恋愛なんて出来ないでそれこそ携帯電話の文字だけで好きだの愛してるだのいって終わりになっちゃうなんて全く恥ずかしいです
2015/02/20(金) 11:49:37 | URL | Wombat #-[ 編集]
Wombatさん、こんにちは。

人間同士が面と向かってお付き合いして暮らすのが当たり前だったつい先日までの世の中(アナログの世の中)は、人間は失敗するのは当たり前という前提でしたから、その失敗を「お互い様だからね」と笑って許しあえるような心のゆとりや寛容さがありましたよね。でも今はそれがないですよね。それどころか失敗すると一斉に非難の的にされてしまう。

デジタル化が進み正確性・便利さ・快適さ・スピードが格段に良くなったことで、確かに表面的には暮らしやすい世の中になりました。でもそれが当たり前になったことで、ちょっとしたミスや遅延さえも許さないという風潮が蔓延し、精神的にはかなり窮屈で息苦しい世の中になってしまったんだと思います。

今、本来人間が必要に応じて使うはずのPCや携帯・スマホが、逆に人間の行動や時間に制約を加え、支配しつつあります。それでも人間はさらなる利便性や快適性・迅速性を手に入れようと疾走し、その代わりに人間は最も人間らしい大切なモノをどんどん捨てていっているように思います。

最も人間らしいもの、それは、心のゆとり。

アナログ、つまり人と人との直接的な付き合いは、心のゆとりを育む。

人間は何を求めて、今進んでいる道をさらに突き進もうとしているのでしょうかね。


2015/02/20(金) 17:29:16 | URL | 三流亭まん丸 #-[ 編集]
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